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タニショーゴの脳内音像文章




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404 

つばを吐くようなやり方でバスから降りると、俺はかなり前に福沢諭吉の顔をしてCD屋にいったことを思い出した。お釣りをもらっていない。どじを踏んだものである。確かあの時買ったのは、THE BEATLESとGrip Inc.であったはずだ。となると、およそ4000円くらいは戻ってくるはずなのに。そういうみみっちいことを考えていると、いきなり店内にかかっていたCarol Kingが止まる。さすが玄人向けCD屋、というような素敵な選曲であったのだが。大きな窓から夕日が差し込むと、どうやら、また緑色の円が目の中に浮かんできた。床が三センチ沈んだ気がした。
店員はまさに顔面蒼白、目を見開いている。本当に残念なことに、彼の黒目は溶け出して床に落ちた。
それでもさらに大きく目を見開くものなので、あごから額まで全て白目になってしまった。彼はそういう人なのだ。俺は彼にロックと帰納法について教えてあげた。店内で静寂がにじむ。隣で女の子が農作業をやっている。割腹自殺をすべき夜、気がつけばそこに居た全員が空の鍋を火にかけるところを想像していた。俺は肺胞は希望でできているらしい、という弟の話を思い出す。もしくは怒りを歯に託すのもいいかもしれない。と言う夢を見た夢を見た夢を見た、と彼は繰り返し始めた。
クトゥルフを信仰する者はこれだからいけない。仕方が無いのでそのがらんどうな部屋を出て後ろ手でドアを閉めたが、よくよく考えるとドアはなかったように思える。いずれにせよ、おそらく彼は無限だろう。したがって俺は、思おうとも思わない。」
[ 2009/03/31 00:00 ] 不思議都市伝説 | TB(0) | CM(0)

403 

そういうときは音楽を聴きたい。なじみの音楽はだいたいケータイに入れていたから、手元には何もない。仕方が無いのでCD屋まで15分歩く。NujabesとRadioheadを手に取りレジに向かう。しまった、ポイントカードは財布のなかだ、便器に落としたままだった。しかたないのであきらめる。
まったく夢の中にでもいるようだ。やりとりが楽でならない。だいたい俺は高校の頃からおおよそ世界中で行われる精算行為というのが嫌いであった。
京都でバスに乗ったときなどひどかった。俺は整理券を取り忘れたために降車精算の際に自分がいくら払えばよいか分からなかった。運転手は、整理券などなくともお前が乗ったバス停を言えばそこからの値段で降ろしてやる、と言ってくれたがいかんせん旅行で初めてきた土地だ、乗車したバス停の名前など覚えているはずもない。俺はずっと黙っていた。
黙っていて、どうしたんだったか、それすらも忘れてしまった。なんとも忘却摩周湖の底で藻がまるまったような脳髄である。確かあの時は、とりあえず終点まで降りずにそこで事情を説明してさっさと無かったことにしてしまおう。どうせ今日はもう旅館に帰るだけだから、そんなに問題ではない。俺は運転手に軽く謝り、座席に戻った。窓からは三条大橋の妙な恍惚感が見える。緑色の薬指をした男と目が合った。
いったいぜんたい俺はどこへ行くのだろうなんてクルクルと手のひらで遊んでいると、すぐに終点についてしまった。不安を味わう時間を与えないとは、このバスは風情のかけらもない。嫌いではないが、友達にはなれないだろう。
[ 2009/03/30 00:00 ] 脳内音像文章 | TB(0) | CM(0)

402 

水に写された顔にはしわが深く刻まれ、額にはイボ、服装は着物で口元は固く結ばれていた。まったく顔まで変わるとは、なんという夢を見ているのだ俺は、疲れているに違いない。しかも、誰に語られるでもなくこの顔の利点まで理解しているのだから、悪夢とは呼ぶこともできず全くたちが悪い。俺は中学生の頃、セックスピストルズのNO FUTURE FOR YOUというメッセージに強いカタルシスを感じていたような人間なので、こういう中途半端は実に困る。まったく、始末に負えない。
とにかく、ハンナフアレンデトが『政治の約束』で述べている通り、福沢諭吉の顔をした男は福沢諭吉の顔をした男たる行動をとるべきである。そう奮起した俺はまず腹ごしらえをすることにした。揚げたてのチキンとおにぎりを4つ、9420円のお釣り。美味い。しまった、飲み物を忘れていた。紙パックの紅茶、9850円のお釣り。甘い。おにぎりとは合わん。
食後はタバコが無性に吸いたくなる。赤マルボロ、9680円のお釣り。まったくタバコも値上がりしたものだ。おそらく葉っぱに石油を染み込ませているせいだろう。俺は不安定な中東の軍事情勢を思い浮かべ少し憂鬱になった。
[ 2009/03/29 00:00 ] 不思議都市伝説 | TB(0) | CM(0)

401 

「夕方、俺は目を覚ました。どうやら排便中に寝たらしい、ウォシュレットが尻を刺激し続けていた。ケータイ、財布も共に便器の中に落としてしまったようだ。おそらく人生で最悪の目覚めだろう。
何を思うでもなく立ち上がると、ウォシュレットの軌道が放物線を描いてトイレの床が水浸しになった。温水が足を撫でる。小さな窓から斜陽が目に突き刺さり、ああ生物の授業くらいもっとまじめに受けておくんだった、なんとかこんとかという現象だ、視界が紫になる。ぼうっとあたりが暗くなったような錯覚。便器が緑色に見える。昔読んだ小説のような緑。目の中で円が浮かんだり曲がったりして、気持ちが悪い。まったくユークリッド幾何学をしらんやつらだ。
目頭を押さえて色彩が正常に戻るのを待つと、その時初めて俺は自分のおかれた状況を理解した。
[ 2009/03/28 00:00 ] 不思議都市伝説 | TB(0) | CM(0)

306 

その時、俺は武士ではないことを思いだして、俺は赤面したのをごまかすのにひたすら激昂したふりをした。小柄な男はひたすら怯えていた。それは同時に演技を終える機会を失ったことを意味するので、俺は少し狼狽したが、読経をして心を鎮めるふりをした。しかしどうにも居たたまれなくなって非礼を詫び、寺で身を清めてくると言い残して逃げるようにその場を後にした。
そこが寺であり、彼らが坊主であることを知ったのは次の日の朝であった。まったく、俺は武士ではない。」
[ 2009/03/22 22:00 ] 不思議都市伝説 | TB(0) | CM(0)